有価証券の不公正取引規制の見直し(無登録営業の罰則強化・インサイダー対象者の拡大・課徴金の引上げ)

施行日:2026年8月12日(無登録営業の罰則強化)/その他は公布後1年以内の政令で定める日・一部は2027年10月1日

国会審議 → 施行までの進み方

施行済
  1. 国会審議
  2. 成立
  3. 公布
  4. 施行 2026年8月12日(無登録営業の罰則強化)/その他は公布後1年以内の政令で定める日・一部は2027年10月1日

この改正はすでに施行されています。

30秒でわかる:この改正のポイント

いつから 2026年8月12日(無登録営業の罰則強化)/その他は公布後1年以内の政令で定める日・一部は2027年10月1日
誰が対象 上場企業(法務・IR部門)、公開買付けに関与するアドバイザー、金融商品取引業者、投資家
何が変わる 第197条第1項に4号の3〜4号の5を新設し、10年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金の対象に / 対象企業と契約を締結・交渉している者(アドバイザー等)を追加(第167条) ほか4項目
罰則 無登録で金融商品取引業を行った場合、不正の手段により登録を受けた場合、他人に金融商品取引業を行わせた場合は、金商法第197条第1項により10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象となります(2026年8月12日施行済み)。
今やること 公開買付けに関与する場合、社外アドバイザーを含めた情報管理の対象範囲を見直す(ほか3件は下のチェックリスト参照)

かんたん要約

  • ●無登録で金融商品取引業を行った場合などが金商法第197条第1項の対象に加えられ、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科の対象になりました(2026年8月12日施行済み)。法人に科される罰金の上限も5億円から7億円になります。
  • ●公開買付けに係るインサイダー取引規制の対象者に、対象企業(買われる側)と契約を締結・交渉している者(アドバイザー等)が追加されます(第167条)。
  • ●課徴金は、大量保有報告制度違反が70倍に、他人名義口座を用いた不公正取引が1.5倍に引き上げられ、口座提供などの協力行為にも課徴金が新設されます。

対象となる人・企業

上場企業(法務・IR部門)、公開買付けに関与するアドバイザー、金融商品取引業者、投資家

改正前 → 改正後(何が変わる?)

改正前(これまで)

無登録営業などへの罰則は5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金

改正後(これから)

第197条第1項に4号の3〜4号の5を新設し、10年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金の対象に

改正前(これまで)

公開買付けのインサイダー規制で、対象企業側は役職員のみが規制対象

改正後(これから)

対象企業と契約を締結・交渉している者(アドバイザー等)を追加(第167条)

改正前(これまで)

公開買付けインサイダーの課徴金は「公表後2週間の最高値」と買付け価格の差額

改正後(これから)

「公表前の価格の50%増し」か「公表後2週間の最高値」のいずれか高い額との差額に

改正前(これまで)

大量保有報告制度違反の課徴金は時価総額の10万分の1

改正後(これから)

70倍の水準に引上げ(第172条の7・第172条の8)

改正前(これまで)

口座を提供するなどの協力行為に対する課徴金はなかった

改正後(これから)

協力行為への課徴金を創設(違反者の利得相当額の半額・第175条の5)

改正前(これまで)

課徴金の減算は調査開始前に申告した場合のみ

改正後(これから)

調査開始後の協力度合いに応じた減算制度を導入

※ 本ページは公布された条文(e-Gov法令検索)と金融庁の法律案説明資料にもとづく整理です。2026年8月12日施行分以外の施行日は政令で定められ、課徴金の水準・対象の細目は政令・内閣府令によります。個別の行為が規制に該当するかは専門家および金融庁の発表でご確認ください。

くわしい解説と実務への影響

段階的なスケジュール

  • 令和8年(2026年)7月23日 「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第64号)として公布
  • 令和8年(2026年)8月12日 無登録営業に対する罰則の引上げ、証券取引等監視委員会の犯則調査の対象拡大が施行(施行済み)
  • 公布後1年以内の政令で定める日 インサイダー取引規制の対象者の拡大、課徴金制度の見直し、調査権限の拡充が施行
  • 令和9年(2027年)10月1日 犯則調査手続のデジタル化が施行

無登録営業の罰則が10年以下の拘禁刑になりました(2026年8月12日施行済み)

公布から20日後の2026年8月12日に施行された部分です(附則第1条第2号)。金商法第197条第1項に第4号の3から第4号の5が新設され、①第29条に違反して登録を受けずに金融商品取引業を行ったとき、②不正の手段により第29条の登録を受けたとき、③第36条の3に違反して他人に金融商品取引業を行わせたときが、同項の対象になりました。これらは改正前は第197条の2第1項(5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金)に置かれていた行為で、同項の第10号の4から第10号の6が削除され、第197条第1項へ移されています。第197条第1項の法定刑は10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科で、金商法の中でも最も重い区分です。

法人に科される罰金の上限も5億円から7億円になります

法人の代表者や従業員が業務に関して違反した場合、行為者を罰するほか法人自体にも罰金刑が科されます(両罰規定・第207条第1項)。同項では第197条の違反に7億円以下、第197条の2第1項の違反に5億円以下と定められているため、無登録営業などが第197条へ移ったことで、法人に科される罰金の上限も5億円から7億円に上がったことになります。あわせて、証券取引等監視委員会の職員が行う犯則調査(第210条第1項)の対象事件に、「委員会職員の調査の対象とすることが公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定めるもの」が加えられ、無登録業者などを強制調査の対象にできる範囲が広がりました。どの事件が対象になるかは政令で定められます。

公開買付けのインサイダー規制で「買われる側のアドバイザー」が対象になります

公開買付け(TOB)に関するインサイダー取引規制では、これまで公開買付けをする側(買う側)の関係者は広く規制対象とされる一方、対象企業(買われる側)の関係者は役職員のみが規制対象でした。改正により、対象企業と契約を締結している者・交渉している者(たとえば対象企業のアドバイザー)などが規制対象に追加されます(第167条)。買収される側で助言を行う立場の人が、公表前の情報を知って売買することが正面から規制されます。

課徴金の水準が引き上げられます

公開買付けに係るインサイダー取引の課徴金は、算定方法が見直されます。現行は「公表後2週間の最高値」と買付け価格の差額でしたが、改正後は「公表前の価格の50%増し」か「公表後2週間の最高値」のいずれか高い額との差額になります。また、大量保有報告制度に違反した場合の課徴金は、現行の時価総額の10万分の1から70倍の水準に引き上げられます(第172条の7・第172条の8)。

他人名義の口座を使うと1.5倍、貸した側にも課徴金

他人名義の口座の提供を受けるなどして不公正取引を行った者には、課徴金が1.5倍に加算されます。さらに、口座を提供するといった協力行為を行った者に対する課徴金が新設されます(第175条の5)。水準は違反者の利得相当額の半額です。名義を貸しただけの人も金銭的な制裁の対象になる、という点が実務上の大きな変化です。

調査に協力すると課徴金が減ります

課徴金の減算制度は、現行では調査開始前に自ら申告した場合にのみ適用されていました。改正により、調査開始後であっても協力の度合いに応じて減算する制度が導入されます(第177条の3等)。調査に協力するインセンティブを設ける趣旨です。

高速取引(HFT)の課徴金の計算方法も見直されます

事前に設定したプログラムにもとづきマイクロ秒単位で高速・高頻度に注文を繰り返し、薄利の日計り取引を大量に行うという高速取引行為の傾向を踏まえ、相場操縦に対する課徴金の算出方法が適正化されます。具体的には、端数の切捨処理の基準値を現行の1万円未満から1円未満に変更し、1日単位で課徴金の額を算定することとされます。

実務上のポイント

上場企業の法務・IR部門にとって直接影響が大きいのは、公開買付けのインサイダー規制の対象者の拡大です。買収される側になったとき、社外のアドバイザーを含めて情報管理の対象を広げる必要があります。大量保有報告の課徴金が70倍になる点も、保有割合の管理体制を見直す動機になります。無登録営業の罰則強化は2026年8月12日にすでに施行されているため、金融商品の取扱いを検討している事業者は登録の要否を先に確認してください。

改正の内容と施行時期

改正事項内容施行
無登録営業の罰則引上げ第197条第1項に4号の3〜4号の5を新設(10年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金)。法人は7億円以下(第207条第1項第1号)2026年8月12日(施行済み)
犯則調査の対象拡大第210条第1項に「政令で定めるもの」を追加し、証券取引等監視委員会の犯則調査の対象を拡大2026年8月12日(施行済み)
インサイダー対象者の拡大公開買付けの対象企業と契約締結・交渉している者等を追加(第167条)公布後1年以内の政令で定める日
課徴金の算定見直し公開買付けインサイダーの算定方法、大量保有報告違反は70倍公布後1年以内の政令で定める日
協力行為への課徴金口座提供等の協力行為に課徴金を創設(利得相当額の半額・第175条の5)公布後1年以内の政令で定める日
課徴金の減算制度調査開始後の協力度合いに応じた減算を導入公布後1年以内の政令で定める日
犯則調査手続のデジタル化調書等の作成・許可状の請求を電子データで2027年10月1日

違反した場合のリスク

無登録で金融商品取引業を行った場合、不正の手段により登録を受けた場合、他人に金融商品取引業を行わせた場合は、金商法第197条第1項により10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象となります(2026年8月12日施行済み)。法人については両罰規定により7億円以下の罰金刑が科されます(第207条第1項第1号)。あわせて、証券取引等監視委員会の犯則調査の対象となる事件の範囲が広がりました(第210条第1項)。

経過措置・猶予

施行は3段階に分かれます。第1段階として、無登録営業に対する罰則の引上げと証券取引等監視委員会の犯則調査の対象拡大が、公布から20日後の2026年8月12日に施行されました(附則第1条第2号)。インサイダー取引規制の対象者の拡大や課徴金制度の見直しは公布後1年以内の政令で定める日、犯則調査手続のデジタル化は2027年10月1日です。

対応チェックリスト

自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。

0 / 4 完了

※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。

よくある質問

いつから施行される?
3段階です。無登録営業の罰則引上げと犯則調査の対象拡大は2026年8月12日(公布から20日後)にすでに施行されました。インサイダー取引規制の対象者の拡大や課徴金の見直しは公布後1年以内の政令で定める日、犯則調査手続のデジタル化は2027年10月1日です。
無登録営業の罰則は具体的にどう変わった?
改正前は第197条の2第1項(5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金)の対象でしたが、2026年8月12日から第197条第1項(10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科)の対象になりました。法人に科される罰金の上限も、両罰規定により5億円から7億円に上がります(第207条第1項第1号)。
TOBの対象になった会社のアドバイザーも規制される?
はい。改正後の第167条で、公開買付けの対象企業と契約を締結している者・交渉している者などが規制対象に追加されます。従来は対象企業側は役職員のみが規制対象でした。施行は公布後1年以内の政令で定める日です。
知人に証券口座を貸すとどうなる?
口座の提供などの協力行為を行った者に対する課徴金が新設されます(第175条の5)。水準は違反者の利得相当額の半額です。あわせて、他人名義の口座を使って不公正取引を行った者の課徴金は1.5倍に加算されます。
大量保有報告書の出し忘れの課徴金はどれくらい上がる?
現行の時価総額の10万分の1という水準から、70倍に引き上げられます。金融庁は近時の事例を踏まえた見直しと説明しています。
有価証券の不公正取引規制の見直し(無登録営業の罰則強化・インサイダー対象者の拡大・課徴金の引上げ)はいつから施行されますか?
2026年8月12日(無登録営業の罰則強化)/その他は公布後1年以内の政令で定める日・一部は2027年10月1日です。(すでに施行されています)
対象になるのはどんな人・企業ですか?
上場企業(法務・IR部門)、公開買付けに関与するアドバイザー、金融商品取引業者、投資家が対象です。自社が該当するかは個別にご確認ください。
何が変わりますか?
これまで「無登録営業などへの罰則は5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」だったものが、「第197条第1項に4号の3〜4号の5を新設し、10年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金の対象に」に変わります。 これまで「公開買付けのインサイダー規制で、対象企業側は役職員のみが規制対象」だったものが、「対象企業と契約を締結・交渉している者(アドバイザー等)を追加(第167条)」に変わります。 これまで「公開買付けインサイダーの課徴金は「公表後2週間の最高値」と買付け価格の差額」だったものが、「「公表前の価格の50%増し」か「公表後2週間の最高値」のいずれか高い額との差額に」に変わります。 これまで「大量保有報告制度違反の課徴金は時価総額の10万分の1」だったものが、「70倍の水準に引上げ(第172条の7・第172条の8)」に変わります。 これまで「口座を提供するなどの協力行為に対する課徴金はなかった」だったものが、「協力行為への課徴金を創設(違反者の利得相当額の半額・第175条の5)」に変わります。 これまで「課徴金の減算は調査開始前に申告した場合のみ」だったものが、「調査開始後の協力度合いに応じた減算制度を導入」に変わります。
注意しておくことはありますか?
本ページは公布された条文(e-Gov法令検索)と金融庁の法律案説明資料にもとづく整理です。2026年8月12日施行分以外の施行日は政令で定められ、課徴金の水準・対象の細目は政令・内閣府令によります。個別の行為が規制に該当するかは専門家および金融庁の発表でご確認ください。
法令の原文はどこで確認できますか?
金融商品取引法の条文は、e-Gov法令検索(デジタル庁)で確認できます。本ページ下部のリンクからアクセスできます。

関連する改正

一次情報・出典

この記事は法改正の概要をわかりやすくお伝えするものであり、法律上のアドバイスではありません。 施行日・金額・要件などは変更される場合があります。実際の対応にあたっては上記の一次情報をご確認のうえ、 個別の事案は社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

この改正情報の最終確認日:2026年8月13日