暗号資産(仮想通貨)の金融商品取引法への移管とインサイダー取引規制の新設
施行日:2026年7月23日公布(施行は公布から1年以内の政令で定める日)
国会審議 → 施行までの進み方
- 国会審議
- 成立
- 3 公布
- 4 施行 時期未定
公布済み。施行日を待っています。
30秒でわかる:この改正のポイント
| いつから | 2026年7月23日公布(施行は公布から1年以内の政令で定める日) |
|---|---|
| 誰が対象 | 暗号資産を扱う事業者、暗号資産を発行する企業、暗号資産事業者と取引・交渉のある企業(法務・コンプライアンス) |
| 何が変わる | 規制の中心を金融商品取引法へ移管し、暗号資産の売買・管理などを「金融商品取引業」に位置づけ / 未公表の重要事実を知っての売買を禁止(第171条の7・第171条の8) ほか2項目 |
| 罰則 | インサイダー取引規制に違反した場合、内閣総理大臣による課徴金納付命令の対象となります(第175条の3・第175条の4)。 |
| 今やること | 暗号資産を発行・保有している場合、社内の情報管理ルールの対象範囲を確認する(ほか4件は下のチェックリスト参照) |
かんたん要約
- ●暗号資産(仮想通貨)の取引ルールの中心が、資金決済法から金融商品取引法へ移されます。暗号資産の売買・管理などが「金融商品取引業」に位置づけられます。
- ●暗号資産にもインサイダー取引規制が新設されます(金商法第171条の7以下)。未公表の重要事実を知って売買することや、他人に伝えて売買させることが禁止されます。
- ●「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第64号)として2026年7月23日に公布されました。施行は公布から1年以内の政令で定める日です。
対象となる人・企業
暗号資産を扱う事業者、暗号資産を発行する企業、暗号資産事業者と取引・交渉のある企業(法務・コンプライアンス)
改正前 → 改正後(何が変わる?)
改正前(これまで)
暗号資産の規制の中心は資金決済法
改正後(これから)
規制の中心を金融商品取引法へ移管し、暗号資産の売買・管理などを「金融商品取引業」に位置づけ
改正前(これまで)
暗号資産にインサイダー取引を直接禁じる規定はなかった
改正後(これから)
未公表の重要事実を知っての売買を禁止(第171条の7・第171条の8)
改正前(これまで)
未公表情報を他人に伝えることへの規制がなかった
改正後(これから)
情報の伝達・取引の推奨も禁止(第171条の10)
改正前(これまで)
発行時に開示すべき情報の法律上のルールがなかった
改正後(これから)
募集・売出しに際して発行者の情報の公表・提供を義務化(第27条の39・第27条の40)
※ 本ページは公布された条文(e-Gov法令検索)にもとづく整理です。施行日、対象となる暗号資産の範囲、公表の方法などの詳細は今後の政令・内閣府令で定められます。個別の取引が規制に該当するかどうかは、金融庁の発表および専門家にご確認ください。
くわしい解説と実務への影響
段階的なスケジュール
- 令和8年(2026年)7月15日 「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決・成立
- 令和8年(2026年)7月23日 令和8年法律第64号として公布
- 令和8年(2026年)8月12日 無登録営業に対する罰則の引上げ、犯則調査の対象拡大が先行して施行(施行済み)
- 公布から1年以内の政令で定める日 暗号資産の金商法への移管、インサイダー取引規制、情報開示制度が施行
インサイダー取引規制の対象になる流れ
未公表の重要事実を知る(役員・取引先・交渉相手・取引所の関係者など)
公表される前に売買する/他人に伝える・勧める
課徴金+刑事罰(5年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金)
公表後に取引すれば規制の対象外
制度の全体像
暗号資産(仮想通貨)の取引ルールは、これまで主に資金決済法(資金決済に関する法律)で定められていました。今回の改正で、その中心が金融商品取引法(金商法)へ移されます。暗号資産が投資の対象として広く扱われるようになった実態にあわせて、株式などと同じ「投資家保護」の枠組みで規律するという整理です。
なぜ移管されるのか
金融庁は、暗号資産が決済手段の観点から資金決済法で規制されてきた一方で、足下では投資対象化が進んでいることを理由に挙げています。説明資料では、国内の口座開設数が1,400万を超え、そのうち年収700万円未満の利用者が約7割を占めること、投資経験者の暗号資産保有率がFX取引や社債等よりも高いことなどが示されています。あわせて、無登録業者による詐欺的な投資勧誘、投資セミナーやオンラインサロンを使った不適切な勧誘、ホワイトペーパーの記載内容の不明確さ、サイバー攻撃による流出事案、価格形成の公正性の確保(インサイダー取引規制に関するIOSCOの勧告や欧州での法制化)が課題として整理されています。
暗号資産の売買が「金融商品取引業」になります
改正後の金商法第2条第8項に、暗号資産の売買・交換(第18号)、その媒介・取次ぎ・代理(第19号)、特定暗号資産の引受け・募集・売出し(第20号〜第22号)、暗号資産の管理(第24号)などが「金融商品取引業」として追加されました。暗号資産を扱う事業者は、金商法の登録業者としての規律を受けることになります。
インサイダー取引規制が新設されます(ここが最大の変更点)
改正前の金商法には、暗号資産について相場操縦や風説の流布を禁じる規定はあったものの、インサイダー取引を直接禁じる規定はありませんでした。今回、金商法に第171条の7以下が新設され、未公表の重要事実を知って暗号資産を売買することが禁止されます。対象は「発行者側の情報」だけではありません。第171条の8では、取引所(暗号資産売買等業務を行う金融商品取引業者)の関係者が、取扱い開始(いわゆる上場)の決定などを知って取引することも禁止されます。
誰が「関係者」になるか
第171条の7では、①発行者の役員等、②会計帳簿の閲覧請求権を持つ株主、③発行者に対する法令上の権限を持つ者、④発行者と契約を結んでいる者・締結の交渉をしている者、などが「特定暗号資産発行者関係者」とされます。上場株式のインサイダー取引規制と同じ考え方で、取引先や交渉中の相手方まで含まれる点、そして関係者でなくなった後も1年以内は規制が続く点に注意が必要です。
情報を伝えるだけでも違反になります
第171条の10で、未公表の重要事実を他人に伝えること、その取引を勧めることも禁止されます。相手に利益を得させる(または損失を避けさせる)目的がある場合が対象です。自分が売買しなくても規制の対象になるという点は、上場株式の情報伝達・取引推奨規制と同じ構造です。
発行時の情報開示も義務化されます
第27条の39により、特定暗号資産の募集・売出しをするには、発行者があらかじめ内閣府令で定める情報(発行者の商号、事業の内容、経理の状況など)を公表していることが必要になります。第27条の40では取得者への情報提供が義務づけられ、第27条の41では違反した場合の損害賠償責任が定められました。
「暗号資産交換業者」は「暗号資産取引業者」になります
業者に対する規制は、第一種金融商品取引業に相当する内容が適用されます。現行の資金決済法にある安全管理措置(原則としてコールドウォレット等での管理)に相当する規制は金商法側に置き直されます。既存の第一種金融商品取引業者が暗号資産取引業を行う場合は変更登録が必要です。あわせて、利用者から暗号資産を借り入れる業務が暗号資産取引業に追加され、暗号資産取引の仲介業が金融商品仲介業の対象になります。不正流出が起きたときの顧客への補償原資として、責任準備金の積立ても求められます(第46条の5)。
情報を公表するのは誰か(発行者がいる暗号資産といない暗号資産)
情報公表の義務者は、暗号資産に発行者がいるかどうかで分かれます。発行者がいる暗号資産(特定暗号資産。IEOトークンなど)は、募集・売出しにあたって発行者があらかじめ情報を公表します(第27条の39)。ビットコインのように発行者がいない暗号資産や、発行者による資金調達を伴わず取引業者が独自に取り扱う場合は、暗号資産取引業者が情報を公表します(第27条の60)。公表内容には、発行者の商号・経理の状況のほか、暗号資産の性質・機能・供給量・基盤技術といった投資判断の基礎になる情報が含まれる予定です。さらに、重要な事象が生じた場合の臨時情報と、年1回の定期情報という継続的な公表も求められます。
監査を受けていない場合は投資に上限がかかります
特定暗号資産の発行者による募集・売出しについて、監査法人等の財務監査が行われていない場合には、投資者の投資上限が設定されます(第27条の59)。金融庁の説明資料では、株式投資型クラウドファンディングと同様の上限(50万円を超える場合は収入または純資産の5%まで、上限200万円。特定投資家は制限なし)を設定する予定とされています。詳細は政令・内閣府令で定められます。
重要事実は3種類に分類されます
インサイダー取引規制の「重要事実」は、①暗号資産の発行者等に関する重要事実(発行者の解散など)、②暗号資産取引業者に関する重要事実(暗号資産の取扱開始・中止など)、③大量売買を行う者に関する重要事実の3つに整理され、これらを列挙したうえでバスケット条項で補完する形が取られます。③の「大量売買」は、政令で発行済暗号資産の20%以上の売買等を定めることが予定されています。規制の対象になる暗号資産は、国内の暗号資産取引業者で取り扱われる暗号資産です。
無登録業者への罰則が大幅に引き上げられます(罰則規定そのものは2026年8月12日に施行済み)
無登録で暗号資産取引業を行った場合の罰則は、資金決済法での3年以下の拘禁刑から、金商法の10年以下の拘禁刑(今回の改正で5年から引き上げ)の対象になります。この罰則の引上げ自体(金商法第197条第1項に第4号の3〜第4号の5を新設)は、附則第1条第2号により公布から20日後の2026年8月12日にすでに施行されており、無登録で金融商品取引業を行う行為に現時点で適用されます。暗号資産を扱う業者への適用は、暗号資産の金商法への移管が施行された後です。法人には両罰規定により7億円以下の罰金刑が科されます(第207条第1項第1号)。証券取引等監視委員会の犯則調査の対象にも追加され、裁判所による緊急差止命令の対象として監視委に申立て権限が整備されます。無登録業者による売付けは、原則無効として立証責任を転換する民事効規定の対象にもなります(第171条の15)。また、対価を受けて取引判断に関する意見を表示する場合に対価を受ける旨の表示を義務づける、いわゆるステルスマーケティング規制の対象にも加えられます(第171条の12)。
実務上のポイント
暗号資産を発行している企業、暗号資産事業者と取引や業務提携の交渉をしている企業は、その過程で知った未公表情報の管理が必要になります。上場企業がインサイダー情報を管理しているのと同じ発想で、社内の情報管理ルールの対象に暗号資産に関する情報を含めるかどうかを、施行までに検討しておくとよいでしょう。事業者側は、変更登録・責任準備金・業務管理体制の整備といった準備が必要になります。施行日と対象範囲は政令待ちのため、金融庁の発表をあわせてご確認ください。
今回新設される主な規定
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第2条第8項第18号〜 | 暗号資産の売買・媒介・引受け・管理などを「金融商品取引業」に追加 |
| 第27条の39〜第27条の41 | 特定暗号資産の募集・売出しに関する情報の公表義務・提供義務・賠償責任 |
| 第171条の7 | 発行者関係者による、未公表の重要事実を知っての売買を禁止 |
| 第171条の8 | 暗号資産取引業者の関係者による、取扱い開始の決定などを知っての売買を禁止 |
| 第171条の10 | 未公表の重要事実の伝達・取引推奨の禁止 |
| 第175条の3・第175条の4 | 違反した者への課徴金納付命令 |
| 第27条の59 | 財務監査が行われていない募集・売出しについて投資者の投資上限を設定 |
| 第27条の60 | 発行者がいない暗号資産等について、暗号資産取引業者が情報を公表 |
| 第46条の5 | 不正流出時の顧客への補償原資として責任準備金を積立て |
| 第171条の12 | ステルスマーケティング規制(対価を受ける旨の表示義務)の対象に追加 |
| 第171条の15 | 無登録業者による売付けを原則無効とする民事効規定 |
| 第197条第1項第4号の3〜第4号の5 | 無登録業などに対する罰則を10年以下の拘禁刑に引上げ(2026年8月12日施行済み) |
違反した場合のリスク
インサイダー取引規制に違反した場合、内閣総理大臣による課徴金納付命令の対象となります(第175条の3・第175条の4)。他人の名義で売買した場合は課徴金が1.5倍に加算されます。刑事罰としては、金商法第197条の2により5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその併科が定められています。
経過措置・猶予
暗号資産の金商法への移管そのものの施行日は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、まだ確定していません(附則第1条)。対象となる暗号資産の範囲や具体的な手続は、今後の政令・内閣府令で定められます。なお、同じ改正法のうち無登録営業に対する罰則の引上げ(第197条第1項)と犯則調査の対象拡大(第210条第1項)は、附則第1条第2号により2026年8月12日にすでに施行されています。
対応チェックリスト
自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。
※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。
よくある質問
ビットコインを持っているだけの個人も対象?
暗号資産が「有価証券」になるということ?
いつから始まるの?
取引所に上場される前の情報を知った場合は?
買える金額に上限がつくと聞いたが?
暗号資産交換業の登録はそのまま使える?
暗号資産(仮想通貨)の金融商品取引法への移管とインサイダー取引規制の新設はいつから施行されますか?
対象になるのはどんな人・企業ですか?
何が変わりますか?
注意しておくことはありますか?
法令の原文はどこで確認できますか?
関連する改正
一次情報・出典
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月)
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案の概要」
- 金融庁(国会提出法案等 — 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案)
- 参議院(議案情報 — 第221回国会)
- e-Gov法令検索(金融商品取引法)
この改正情報の最終確認日:2026年8月13日