社会保障法 労働者災害補償保険法(労災保険法) 公布 施行まであと188日 ほぼ全事業者

労災保険法の改正(遺族補償年金の男女差解消・時効5年・農林水産業への適用拡大)

施行日:2027年4月1日(一部は公布日・暫定措置の廃止は公布後5年以内の政令で定める日)

国会審議 → 施行までの進み方

施行まであと188日
  1. 国会審議
  2. 成立
  3. 3 公布
  4. 4 施行 2027年4月1日(一部は公布日・暫定措置の廃止は公布後5年以内の政令で定める日)

公布済み。施行まであと188日です。

30秒でわかる:この改正のポイント

いつから 2027年4月1日(一部は公布日・暫定措置の廃止は公布後5年以内の政令で定める日)
誰が対象 全ての事業主(労務・安全衛生担当)/労災で家族を亡くした遺族/農林水産業の小規模な個人経営事業主/特別加入団体
何が変わる 「配偶者以外の者」に改められ、夫の年齢要件を撤廃(第16条の2第1項・附則第43条) / 遺族が1人の場合の額を一律175日分に(別表第一) ほか4項目
今やること 労災で従業員が亡くなった場合の遺族向け案内から「夫は55歳以上」の記載を見直す(2027年4月1日以降)(ほか3件は下のチェックリスト参照)

かんたん要約

  • ●遺族補償年金で夫にだけ課されていた年齢要件(妻の死亡当時55歳以上・60歳まで支給停止)が撤廃され、配偶者は男女同じ扱いになります(第16条の2・附則第43条)。
  • ●遺族が1人の場合の年金額が、給付基礎日額の153日分(55歳以上等の妻は175日分)から一律175日分に引き上げられます(別表第一)。
  • ●労災給付の請求権の消滅時効が、業務との関係を判断しにくい疾病として政令で定めるものについて2年から5年に延長されます。あわせて農林水産業の小規模な個人経営も労災保険の適用事業になります(公布後5年以内の政令で定める日)。

対象となる人・企業

全ての事業主(労務・安全衛生担当)/労災で家族を亡くした遺族/農林水産業の小規模な個人経営事業主/特別加入団体

改正前 → 改正後(何が変わる?)

改正前(これまで)

遺族補償年金は「妻以外の者」に年齢要件。夫は55歳以上(60歳まで支給停止)でないと受給できない

改正後(これから)

「配偶者以外の者」に改められ、夫の年齢要件を撤廃(第16条の2第1項・附則第43条)

改正前(これまで)

遺族が1人の場合の額は給付基礎日額の153日分(55歳以上等の妻は175日分)

改正後(これから)

遺族が1人の場合の額を一律175日分に(別表第一)

改正前(これまで)

療養補償給付などの請求権の消滅時効は2年

改正後(これから)

判断が容易でない疾病として政令で定めるものについて5年に延長(労災保険法・船員保険法・労働基準法)

改正前(これまで)

農林水産業の小規模な個人経営の一部は暫定任意適用事業(加入は任意)

改正後(これから)

暫定措置を廃止し、労災保険の適用事業に(公布後5年以内の政令で定める日)

改正前(これまで)

特別加入団体の要件は通達等で規定

改正後(これから)

要件を法令に規定し、業務改善命令・保険関係の消滅を可能に

改正前(これまで)

社会復帰促進等事業の決定への不服申立ては行政不服審査法にもとづく手続き

改正後(これから)

労働者災害補償保険審査官・労働保険審査会への審査請求・再審査請求に一本化

※ 本ページは公布された条文(e-Gov法令検索)と厚生労働省の法律案概要・要綱にもとづく整理です。時効が5年になる疾病の範囲、暫定任意適用事業の廃止の施行日、不服申立ての対象事業は、いずれも今後の政令で定まります。個別の給付の可否・金額は労働基準監督署にご確認ください。

くわしい解説と実務への影響

段階的なスケジュール

  • 令和8年(2026年)7月17日 「労働者災害補償保険法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第60号)として公布。一部は同日施行
  • 令和9年(2027年)4月1日 遺族補償年金の男女差解消、消滅時効の延長、特別加入団体の要件の法定化などが施行
  • 公布後5年以内の政令で定める日 労災保険の暫定任意適用事業(農林水産業の小規模な個人経営)の廃止が施行

遺族補償年金の男女差がなくなります(最大の変更点)

労災で亡くなった労働者の配偶者が遺族補償年金を受けられるかどうかは、これまで夫と妻で扱いが違いました。妻は年齢を問わず受給できる一方、夫は「妻の死亡当時55歳以上」でなければ受給できず、しかも55歳以上60歳未満のあいだは支給が停止される(60歳から支給開始)というしくみでした。改正により、第16条の2第1項ただし書の対象が「妻以外の者」から「配偶者以外の者」に改められ、同項第1号から「夫」が削られます。あわせて、若年停止を定めていた附則第43条からも「夫」が削られ、夫にも年齢要件が一切かからなくなります。通勤災害の遺族年金、複数事業労働者遺族年金についても同様です(附則第5条・第7条)。

遺族が1人のときの年金額が引き上げられます

遺族補償年金の額を定める別表第一が改められ、遺族が1人の場合の額が「給付基礎日額の153日分(ただし55歳以上の妻または厚生労働省令で定める障害の状態にある妻は175日分)」から、一律で「給付基礎日額の175日分」になります。これまで153日分だった方(55歳未満の妻など)と、新たに受給できるようになる夫が、いずれも175日分を受けられます。遺族が2人以上の場合の額(2人201日分・3人223日分・4人以上245日分)は変わりません。あわせて、妻が55歳に達したときなどに額を改定する規定(第16条の3第4項)は、区分がなくなるため削除されます。

請求の時効が2年から5年に延びます

療養補償給付・休業補償給付・葬祭料・介護補償給付などを受ける権利の消滅時効が、2年から5年に延長されます。対象は、その疾病の性質上、災害補償の事由に該当するかどうかを容易に判断することができない疾病として政令で定めるものに限られます。労災保険法だけでなく、船員保険法と労働基準法(災害補償の請求権)にも同じ趣旨の改正が入ります。じん肺や石綿関連疾患のように、発症までに時間がかかり業務との関係の判断が難しい疾病を念頭に置いたものです。対象疾病の具体的な範囲は今後の政令で定まります。

農林水産業の小規模な個人経営も労災保険の対象になります

現在、労働者数5人未満の農林水産業の個人経営の一部は「暫定任意適用事業」として、労災保険の加入が任意とされています。この暫定措置が廃止され、原則どおりの適用事業になります。施行は公布から5年以内の政令で定める日とされており、準備期間が長く取られています。

特別加入団体にルールと監督が入ります

一人親方等の特別加入の手続きを行う「特別加入団体」について、これまで通達等で定められていた要件(労災保険に係る業務や業務災害の防止に関する活動を適切に実施できること等)が法令に規定されます。あわせて、政府は特別加入団体に業務改善命令を出すことができ、命令に違反した場合にはその団体についての保険関係を消滅させることができるようになります。

不服申立ての窓口が労災給付と同じになります

社会復帰促進等事業(アフターケア、労災就学援護費など)に関する決定への不服申立ては、これまで行政不服審査法にもとづく手続きでしたが、労災保険給付の決定と同じく、労働者災害補償保険審査官への審査請求・労働保険審査会への再審査請求のルートに一本化されます。対象となる事業は政令で定められます。

事業主の実務への影響

保険料率や届出の様式が直接変わる改正ではありません。影響が大きいのは、労災で従業員が亡くなったときの遺族への案内内容です。「夫は55歳以上でないと年金を受けられない」という従来の説明は、2027年4月1日以降は当てはまらなくなります。また、時効が5年になる疾病が出てくるため、過去の疾病について相談を受けたときに「2年で時効」と即答しないよう注意が必要です。

配偶者が遺族補償年金を受けられる条件

改正前

  • –妻:年齢を問わず受給できる
  • –夫:妻の死亡当時55歳以上であることが必要
  • –夫が55歳以上60歳未満のあいだは支給停止(60歳から支給開始)

改正後(2027年4月1日〜)

  • ✓妻:年齢を問わず受給できる(変更なし)
  • ✓夫:年齢要件が撤廃され、妻と同じ扱いに
  • ✓若年停止(附則第43条)の対象からも夫が外れる

遺族補償年金の額(別表第一・給付基礎日額の日数)

遺族の人数改正前改正後(2027年4月1日〜)
1人153日分(55歳以上または一定の障害の状態にある妻は175日分)175日分(一律)
2人201日分201日分(変更なし)
3人223日分223日分(変更なし)
4人以上245日分245日分(変更なし)

経過措置・猶予

主要な改正は2027年4月1日に施行されます。社会復帰促進等事業に関する決定への不服申立ての一部は公布日(2026年7月17日)からすでに施行されています。労災保険の暫定任意適用事業(農林水産業の小規模な個人経営)の廃止は「公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日」からで、具体的な日はまだ決まっていません。

対応チェックリスト

自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。

0 / 4 完了

※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。

よくある質問

いま遺族補償年金を受けている人にも影響はある?
額の改定に関する規定が変わるため、遺族が1人の場合の額は一律175日分に統一されます。施行日前後の具体的な取り扱いは経過措置で定められます。個別の支給額は労働基準監督署にご確認ください。
夫はいつから年齢に関係なく受け取れる?
2027年4月1日からです。第16条の2第1項の年齢要件と、附則第43条の若年停止の対象の双方から「夫」が削られます。
時効が5年になるのはどの給付?
療養補償給付・休業補償給付・葬祭料・介護補償給付と、これに対応する複数事業労働者向けの給付・通勤災害の給付です。ただし、その疾病の性質上、業務との関係を容易に判断できない疾病として政令で定めるものに限られます。対象疾病は今後の政令で定まります。
農林水産業の事業主は今すぐ加入が必要?
いいえ。暫定任意適用事業の廃止は「公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日」からの施行です。施行日は今後の政令で定まります。
会社の労災保険料は上がる?
この改正で保険料率が変わるわけではありません。料率は別途、労働政策審議会の議論を経て改定されます。
労災保険法の改正(遺族補償年金の男女差解消・時効5年・農林水産業への適用拡大)はいつから施行されますか?
2027年4月1日(一部は公布日・暫定措置の廃止は公布後5年以内の政令で定める日)です。(本日からおよそ188日後)
対象になるのはどんな人・企業ですか?
全ての事業主(労務・安全衛生担当)/労災で家族を亡くした遺族/農林水産業の小規模な個人経営事業主/特別加入団体が対象です。自社が該当するかは個別にご確認ください。
何が変わりますか?
これまで「遺族補償年金は「妻以外の者」に年齢要件。夫は55歳以上(60歳まで支給停止)でないと受給できない」だったものが、「「配偶者以外の者」に改められ、夫の年齢要件を撤廃(第16条の2第1項・附則第43条)」に変わります。 これまで「遺族が1人の場合の額は給付基礎日額の153日分(55歳以上等の妻は175日分)」だったものが、「遺族が1人の場合の額を一律175日分に(別表第一)」に変わります。 これまで「療養補償給付などの請求権の消滅時効は2年」だったものが、「判断が容易でない疾病として政令で定めるものについて5年に延長(労災保険法・船員保険法・労働基準法)」に変わります。 これまで「農林水産業の小規模な個人経営の一部は暫定任意適用事業(加入は任意)」だったものが、「暫定措置を廃止し、労災保険の適用事業に(公布後5年以内の政令で定める日)」に変わります。 これまで「特別加入団体の要件は通達等で規定」だったものが、「要件を法令に規定し、業務改善命令・保険関係の消滅を可能に」に変わります。 これまで「社会復帰促進等事業の決定への不服申立ては行政不服審査法にもとづく手続き」だったものが、「労働者災害補償保険審査官・労働保険審査会への審査請求・再審査請求に一本化」に変わります。
注意しておくことはありますか?
本ページは公布された条文(e-Gov法令検索)と厚生労働省の法律案概要・要綱にもとづく整理です。時効が5年になる疾病の範囲、暫定任意適用事業の廃止の施行日、不服申立ての対象事業は、いずれも今後の政令で定まります。個別の給付の可否・金額は労働基準監督署にご確認ください。
法令の原文はどこで確認できますか?
労働者災害補償保険法(労災保険法)の条文は、e-Gov法令検索(デジタル庁)で確認できます。本ページ下部のリンクからアクセスできます。

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一次情報・出典

この記事は法改正の概要をわかりやすくお伝えするものであり、法律上のアドバイスではありません。 施行日・金額・要件などは変更される場合があります。実際の対応にあたっては上記の一次情報をご確認のうえ、 個別の事案は社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

この改正情報の最終確認日:2026年8月1日