犯罪収益移転防止法の改正(闇バイト対策の罰則強化+本人確認・eKYCの見直し)

施行日:罰則強化は2026年7月10日施行済み・本人確認の見直しは2027年4月1日

国会審議 → 施行までの進み方

施行まであと202日
  1. 国会審議
  2. 成立
  3. 3 公布
  4. 4 施行 罰則強化は2026年7月10日施行済み・本人確認の見直しは2027年4月1日

公布済み。施行まであと202日です。

30秒でわかる:この改正のポイント

いつから 罰則強化は2026年7月10日施行済み・本人確認の見直しは2027年4月1日
誰が対象 銀行・資金移動業者・暗号資産交換業者などの金融機関、クレジットカード会社、宅地建物取引業者、貴金属等取扱事業者、士業(弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士)などの特定事業者/口座を持つすべての個人・法人
何が変わる 3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(業として行うと5年以下・1,000万円以下)に引上げ【2026年7月10日施行済み】 / 送金犯罪を新設。依頼する側も実行する側も2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(業として行うと3年以下・500万円以下)【2026年7月10日施行済み】 ほか1項目
今やること (金融機関等の特定事業者)2027年4月1日に向けて、非対面の本人確認フローを公的個人認証(JPKI)対応へ移行する計画を立てる(ほか4件は下のチェックリスト参照)

かんたん要約

  • 犯罪収益移転防止法(犯収法)をめぐって、法律改正(令和8年法律第34号・2026年6月10日公布)と本人確認ルールの規則改正(令和8年共同命令・2026年3月公布)が相次いでいます。
  • 法律改正は闇バイト・詐欺対策が柱です。預貯金通帳等の不正譲渡の罰則引上げと、「送金アルバイト」を処罰する送金犯罪の新設は2026年7月10日に施行済みです。
  • 警察が金融機関と協力して設ける「架空名義口座」を使った新たな対策は、公布から1年以内(2027年6月9日まで)に政令で定める日に施行されます。
  • 本人確認(eKYC)は2027年4月1日に大きく変わります。身分証の画像送信による方式(いわゆるホ方式)などが廃止され、非対面はマイナンバーカードの公的個人認証が中心に、対面はICチップ読み取りが求められる方向です。

対象となる人・企業

銀行・資金移動業者・暗号資産交換業者などの金融機関、クレジットカード会社、宅地建物取引業者、貴金属等取扱事業者、士業(弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士)などの特定事業者/口座を持つすべての個人・法人

改正前 → 改正後(何が変わる?)

改正前(これまで)

通帳等の不正譲渡の罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(業として行うと3年以下・500万円以下)

改正後(これから)

3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(業として行うと5年以下・1,000万円以下)に引上げ【2026年7月10日施行済み】

改正前(これまで)

依頼を受けて他人の資金を送金する「送金アルバイト」を直接処罰する規定がなかった

改正後(これから)

送金犯罪を新設。依頼する側も実行する側も2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(業として行うと3年以下・500万円以下)【2026年7月10日施行済み】

改正前(これまで)

非対面の本人確認は、身分証の画像送信(ホ方式)など複数の方式が併存

改正後(これから)

2027年4月1日から、画像送信による方式等を廃止し、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)等へ集約。対面でも身分証のICチップ読み取りが基本に

※ 本人確認手法の見直しは法律第34号ではなく、犯収法施行規則等の改正(令和8年共同命令第1号・2026年3月6日公布)によるものです。政府の「国民を詐欺から守るための総合対策」に基づき、偽造身分証によるなりすまし口座開設を防ぐことが目的です。

くわしい解説と実務への影響

段階的なスケジュール

  • 2026年3月6日 本人確認手法を見直す犯収法施行規則等の改正(令和8年共同命令第1号)が公布
  • 2026年6月10日 改正犯収法(令和8年法律第34号)が公布
  • 2026年7月10日 通帳等の不正譲渡の罰則引上げ・送金犯罪の新設が施行(施行済み)
  • 2027年4月1日 本人確認手法の見直しが施行。ホ方式等の廃止・公的個人認証への集約・対面のICチップ読み取り
  • 2027年6月9日まで 架空名義口座を利用した対策の施行(公布から1年以内に政令で定める日)

なぜいま犯収法が変わるのか

特殊詐欺や「闇バイト」による強盗・詐欺事件の資金の流れには、売買された他人名義の口座と、依頼を受けて資金を転送する運び屋役が使われます。また、偽造した身分証でオンラインの本人確認(eKYC)を突破し、他人名義の口座を開設する手口も深刻化しています。今回の一連の改正は、政府が2024年6月に決定した「国民を詐欺から守るための総合対策」を実行に移すもので、①口座売買と送金役への罰則強化(法律改正)、②本人確認手法の厳格化(規則改正)という二本立てになっています。

法律改正(令和8年法律第34号)の3本柱

2026年6月10日公布の改正法の内容は3つです。第一に、預貯金通帳・キャッシュカード等の不正譲渡の法定刑を「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」から「3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」へ引き上げました(業として行う場合は5年以下・1,000万円以下)。第二に、いわゆる送金アルバイトを処罰する「送金犯罪」を新設しました(改正法32条)。依頼する側と実行する側の双方が対象です。この2つは2026年7月10日に施行済みです。第三に、警察が金融機関と協力して架空名義口座を設け、犯罪グループの口座調達ルートに対抗する新たな仕組みが設けられました(第4章の2)。こちらは公布から1年以内に政令で定める日に施行されます。

本人確認(eKYC)の見直しは「規則改正」で2027年4月に施行

本人確認手法の見直しは、上の法律改正とは別に、犯収法施行規則等の改正(令和8年共同命令第1号・2026年3月6日公布、関連する命令改正が同年6月26日にも公布)で行われ、2027年4月1日に施行されます。ポイントは、偽造耐性の低い確認方法を廃止し、なりすましにくい方法へ集約することです。非対面では、運転免許証等の画像をアップロードする方式(ホ方式)などが廃止され、マイナンバーカードのICチップを使う公的個人認証(JPKI)が中心になります。対面でも、身分証の券面の目視ではなくICチップの読み取りが基本になります。

金融機関・特定事業者の実務への影響

対象は銀行や資金移動業者だけでなく、クレジットカード会社、宅地建物取引業者、貴金属等取扱事業者、士業など犯収法上の特定事業者全体です。非対面の口座開設・契約フローをeKYCベンダーとともにJPKI対応へ改修し、対面窓口にはICチップ読み取りの機器やアプリを整備する必要があります。2027年4月の施行日に向けてシステム改修が集中することが見込まれるため、大手金融機関には前倒しで移行を始める動きもあります。自社の本人確認フローがホ方式に依存している事業者は、移行計画の策定を早めに始めるのが安全です。

個人にとっての意味:「口座を売る・送金を手伝う」は重罪化した

個人への最大のメッセージは、口座の売買と送金の手伝いが割に合わない犯罪になったことです。SNSの「高額バイト」の中には、口座の譲渡や「振り込まれたお金を指定口座に送るだけ」という誘いが紛れています。改正後は、送る側も依頼する側も送金犯罪として処罰され、通帳の譲渡は最大で拘禁刑5年・罰金1,000万円(業として行う場合)に達します。また2027年4月以降は、オンラインでの口座開設にマイナンバーカードが事実上必要になる場面が増えるため、カードを持っていない人は取得を検討する価値があります。

闇バイト関連の罰則:改正前後の対照

改正前

  • 通帳等の不正譲渡:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 業として行う場合:3年以下・500万円以下
  • 「送金するだけ」の行為を直接処罰する規定なし

2026年7月10日〜(施行済み)

  • 通帳等の不正譲渡:3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金
  • 業として行う場合:5年以下・1,000万円以下(組織的犯罪処罰法の対象にも)
  • 送金犯罪を新設:依頼側・実行側とも2年以下・300万円以下(業として3年以下・500万円以下)

本人確認(KYC)はこう変わる

現在

  • 非対面:身分証の画像送信(ホ方式)など複数方式が併存
  • 写真なしの本人確認書類も一部利用可
  • 対面:身分証の目視確認が中心

2027年4月1日〜

  • 非対面:マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)等へ集約
  • 画像送信方式・写真なし書類による確認は廃止
  • 対面:身分証のICチップ読み取りが基本に

経過措置・猶予

罰則引上げと送金犯罪の新設は2026年7月10日に施行済みです。架空名義口座を利用した対策は公布から1年以内(2027年6月9日まで)に政令で定める日、本人確認手法の見直し(規則改正)は2027年4月1日に施行されます。

対応チェックリスト

自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。

0 / 5 完了

※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。

よくある質問

「送金アルバイト」とは何が犯罪になるのですか?
他人から依頼を受けて、犯罪に関わる資金と知りながら(またはその疑いを認識しながら)自分の口座を経由して送金する行為です。依頼する側・実行する側の双方が処罰対象で、法定刑は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(業として行うと3年以下・500万円以下)です。「口座を貸すだけ」「振り込まれたお金を別の口座に送るだけ」という闇バイトが典型例です。
通帳を売るとどうなりますか?
預貯金通帳・キャッシュカード等の不正譲渡は、2026年7月10日から3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(業として行うと5年以下・1,000万円以下)に引き上げられました。改正前(1年以下・100万円以下)の3〜5倍の水準です。
eKYC(オンライン本人確認)はいつから変わりますか?
2027年4月1日です。運転免許証などの画像を送信する方式(いわゆるホ方式)や、写真なし身分証による確認が廃止され、非対面はマイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)が中心になります。金融機関の中には前倒しで移行を進めているところもあります。
「架空名義口座」の対策とは何ですか?
警察が金融機関の協力を得て、特別の措置を講じた架空名義の口座をあらかじめ用意し、詐欺グループの口座売買ルートに流すことで犯行を検知・防止する仕組みです(改正法第4章の2)。この口座に振り込まれた被害金は被害者への返還が予定されています。施行は公布から1年以内(2027年6月9日まで)に政令で定める日です。
マイナンバーカードを持っていないと口座が作れなくなりますか?
非対面(オンライン)の本人確認はマイナンバーカードの公的個人認証に集約される方向ですが、対面での本人確認(身分証のICチップ読み取り等)は引き続き可能です。詳細な代替手段は各事業者の対応によるため、利用する金融機関の案内をご確認ください。
犯罪収益移転防止法の改正(闇バイト対策の罰則強化+本人確認・eKYCの見直し)はいつから施行されますか?
罰則強化は2026年7月10日施行済み・本人確認の見直しは2027年4月1日です。(本日からおよそ202日後)
対象になるのはどんな人・企業ですか?
銀行・資金移動業者・暗号資産交換業者などの金融機関、クレジットカード会社、宅地建物取引業者、貴金属等取扱事業者、士業(弁護士・司法書士・行政書士・公認会計士・税理士)などの特定事業者/口座を持つすべての個人・法人が対象です。自社が該当するかは個別にご確認ください。
何が変わりますか?
これまで「通帳等の不正譲渡の罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(業として行うと3年以下・500万円以下)」だったものが、「3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(業として行うと5年以下・1,000万円以下)に引上げ【2026年7月10日施行済み】」に変わります。 これまで「依頼を受けて他人の資金を送金する「送金アルバイト」を直接処罰する規定がなかった」だったものが、「送金犯罪を新設。依頼する側も実行する側も2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(業として行うと3年以下・500万円以下)【2026年7月10日施行済み】」に変わります。 これまで「非対面の本人確認は、身分証の画像送信(ホ方式)など複数の方式が併存」だったものが、「2027年4月1日から、画像送信による方式等を廃止し、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)等へ集約。対面でも身分証のICチップ読み取りが基本に」に変わります。
注意しておくことはありますか?
本人確認手法の見直しは法律第34号ではなく、犯収法施行規則等の改正(令和8年共同命令第1号・2026年3月6日公布)によるものです。政府の「国民を詐欺から守るための総合対策」に基づき、偽造身分証によるなりすまし口座開設を防ぐことが目的です。
法令の原文はどこで確認できますか?
犯罪収益移転防止法(犯収法)の条文は、e-Gov法令検索(デジタル庁)で確認できます。本ページ下部のリンクからアクセスできます。

関連する改正

一次情報・出典

この記事は法改正の概要をわかりやすくお伝えするものであり、法律上のアドバイスではありません。 施行日・金額・要件などは変更される場合があります。実際の対応にあたっては上記の一次情報をご確認のうえ、 個別の事案は社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

この改正情報の最終確認日:2026年9月4日