遺言制度の見直し(押印の任意化・保管証書遺言の創設)
施行日:押印の任意化は公布から1年以内、保管証書遺言は3年以内に政令で定める日
国会審議 → 施行までの進み方
- 国会審議
- 成立
- 3 公布
- 4 施行 時期未定
公布済み。施行日を待っています。
30秒でわかる:この改正のポイント
| いつから | 押印の任意化は公布から1年以内、保管証書遺言は3年以内に政令で定める日 |
|---|---|
| 誰が対象 | 遺言を書こうと考えている方、相続人になる可能性がある方、相続に関わる実務者 |
| 何が変わる | パソコン等を用いて作成したデータやプリントアウトを法務局に保管申請できる(保管証書遺言) / オンラインでの保管申請や、ウェブ会議を利用した手続が可能になる ほか2項目 |
| 今やること | いま遺言を作るなら、当面は現行の方式(自筆証書遺言・公正証書遺言)で作成する(ほか4件は下のチェックリスト参照) |
かんたん要約
- ●民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が2026年6月24日に公布され、遺言制度が見直されます。
- ●自筆証書遺言・秘密証書遺言・特別の方式の遺言について、遺言者や証人の押印要件が廃止され、押印は任意になります(公布から1年以内に施行)。
- ●パソコン等で作成した遺言のデータを法務局に保管してもらう「保管証書遺言」が創設されます(公布から3年以内に施行)。
- ●保管証書遺言では、相続開始後の家庭裁判所での検認手続が不要になります。
対象となる人・企業
遺言を書こうと考えている方、相続人になる可能性がある方、相続に関わる実務者
改正前 → 改正後(何が変わる?)
改正前(これまで)
自筆証書遺言の本文は本人が手書きする必要があり、負担が大きい
改正後(これから)
パソコン等を用いて作成したデータやプリントアウトを法務局に保管申請できる(保管証書遺言)
改正前(これまで)
自筆証書遺言書保管制度を使うには本人が法務局に出頭して対面手続が必要
改正後(これから)
オンラインでの保管申請や、ウェブ会議を利用した手続が可能になる
改正前(これまで)
自筆証書遺言・秘密証書遺言には遺言者の押印が必要
改正後(これから)
押印要件が廃止され、押印は任意になる
改正前(これまで)
死亡危急時遺言は証人三人以上の立会いが必要
改正後(これから)
録音・録画をすることで証人一人以上の立会いで作成できる方式が加わる
※ 施行日は政令で定められます。押印の任意化は公布から1年以内(2027年6月23日まで)、システム改修を要する保管証書遺言は公布から3年以内(2029年6月23日まで)と、時期が分かれます。e-Gov法令検索では、政令が定まるまでこの期限日が施行予定日として登録されています。
くわしい解説と実務への影響
段階的なスケジュール
- 2026年6月17日・24日 参議院本会議で可決・成立(17日)、公布(24日/令和8年法律第45号)
- 2027年6月23日まで 押印の任意化・特別の方式の遺言の見直しが施行(公布から1年以内の政令で定める日)
- 2029年6月23日まで 保管証書遺言の創設が施行(公布から3年以内の政令で定める日)
何が変わるのか
法務省は見直しの背景として、デジタル機器の普及と手書きする機会の減少、自筆証書遺言の本文を本人が手書きしなければならない負担の大きさ、押印に関する慣行や法意識の変容、そして相続登記の促進による所有者不明土地問題への対応の必要性を挙げています。柱は「保管証書遺言」という新しい方式の創設と、押印要件の廃止です。
保管証書遺言:パソコンで作って法務局に預ける
パソコン等を用いて作成した遺言のデータ、またはそれをプリントアウトしたものを法務局に提供し、本人が対面またはウェブ会議を利用して遺言の全文を口述するなどして、法務局が遺言を保管する方式です(民法968条の2・968条の3、遺言書保管法7条〜13条・17条〜20条)。署名またはこれに代わる措置(電子署名が想定)が必要で、保管申請はオンラインでも行えます。遺言書保管官による本人確認で第三者のなりすましを防ぎ、遺言者が全文を口述することで本人の真意に基づかない遺言が作られることを防ぐ設計です。財産目録については、遺言書保管官が遺言者に閲覧させることなどにより口述を不要とすることも可能とされています。口がきけない方は、全文の口述に代えて通訳人の通訳や自書によることができます。
保管されるとどうなるか
法務局に保管されることで紛失や改ざんを防げます。遺言の存在は遺言者が指定した者に通知され、相続登記をはじめとする遺言執行が円滑になります。相続開始後、相続人等は遺言書の証明書の交付請求や閲覧請求ができ、証明書はデータ・書面のいずれの形式も選べ、オンラインでの請求も可能です。そして相続開始後の家庭裁判所における検認手続が不要になります。既存の自筆証書遺言書保管制度についても、オンラインによる保管申請や証明書の交付請求、ウェブ会議を利用した各種手続ができるようになります。
押印がいらなくなる
自筆証書遺言、秘密証書遺言、特別の方式の遺言における遺言者および証人等の押印要件が廃止され、押印は任意になります(民法968条・970条・976条・979条・980条)。遺言書の加除その他の変更の際の押印要件も同様です。行政手続や民間の商慣行で押印の見直しが進んだこと、公正証書遺言については令和5年の公証人法改正で遺言者等の押印要件が既に廃止されていることが背景にあります。こちらは公布から1年以内の施行なので、保管証書遺言より先に動き出します。
危急時の遺言も録音・録画で作れるようになる
死亡の危急に迫った状況で作る死亡危急時遺言は、現行では証人三人以上の立会いが必要で、その場で証人を確保する負担が指摘されていました。改正により、パソコン等で作成したデータを遺言とすることが可能になり、遺言作成状況を録音・録画することで証人一人以上の立会い(ウェブ会議の利用可)で作成できる方式が追加されます(民法976条の2)。船舶遭難者遺言については、作成が認められる場面に大規模地震等の「天災その他避けることのできない事変」が加わり、①録音・録画により証人一人以上の立会いで作成する方式と、②録音・録画したうえで特定の者にメール等で送信することにより証人の立会いを不要とする方式が追加されます(民法979条・979条の2)。
証人を頼める人の範囲が狭くなる
証人等の欠格事由の範囲が広がり、受遺者本人だけでなく、その被用者(受遺者が法人の場合はその被用者および役員)も証人になれなくなります(民法974条)。単身高齢者が増加し、入所している高齢者施設等へ遺贈が行われる例があるためです。施設や法人に遺贈する内容の遺言で、その施設の職員に証人を依頼するといった形は取れなくなります。
いま遺言を作るならどうするか
押印の任意化は公布から1年以内、保管証書遺言は3年以内と施行時期が分かれます。当面は現行の方式(自筆証書遺言・公正証書遺言)で作ることになります。パソコンで作成したいという理由だけで遺言を先送りするのは、その間に相続が発生するリスクを考えると得策とは言えません。まず現行の方式で作っておき、保管証書遺言が使えるようになった段階で作り直すという進め方が現実的です。
遺言制度の見直し 施行の順番
公布から1年以内の政令で定める日
システム改修を要するため公布から3年以内
出典: 法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」
経過措置・猶予
押印の任意化と特別の方式の遺言の見直しは公布から1年を超えない範囲内で政令が定める日(2027年6月23日まで)、システム改修を要する保管証書遺言の創設は公布から3年を超えない範囲内で政令が定める日(2029年6月23日まで)から施行されます。
対応チェックリスト
自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。
※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。
よくある質問
いつからパソコンで遺言が作れる?
保管証書遺言はどうやって作る?
検認は必要?
押印はいつからいらなくなる?
証人になれない人が増える?
災害で危急のときの遺言は?
遺言制度の見直し(押印の任意化・保管証書遺言の創設)はいつから施行されますか?
対象になるのはどんな人・企業ですか?
何が変わりますか?
注意しておくことはありますか?
法令の原文はどこで確認できますか?
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この改正情報の最終確認日:2026年8月29日