成年後見制度の見直し(後見・保佐の廃止と補助への一元化)

施行日:公布から2年6月以内(2028年12月23日まで)に政令で定める日

国会審議 → 施行までの進み方

  1. 国会審議
  2. 成立
  3. 3 公布
  4. 4 施行 時期未定

公布済み。施行日を待っています。

30秒でわかる:この改正のポイント

いつから 公布から2年6月以内(2028年12月23日まで)に政令で定める日
誰が対象 判断能力が不十分な方とその家族、成年後見人・保佐人・補助人、任意後見の当事者、福祉・介護・金融の実務者
何が変わる 補助の制度に一元化し、必要な行為について個別に代理権・同意権を付与する / 法定の重要な財産行為の取消権だけを選ぶ「特定補助の仕組み」も選択できる ほか2項目
今やること 現在利用している制度(後見・保佐・補助)がどれかを確認する(ほか4件は下のチェックリスト参照)

かんたん要約

  • ●民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)が2026年6月24日に公布され、成年後見制度が大きく見直されます。
  • ●後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化し、本人に必要な行為についてだけ代理権・同意権を付与する形になります。
  • ●これまでは事理弁識能力が回復しない限り制度利用をやめられませんでしたが、必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば終了できるようになります。
  • ●施行は公布から2年6月を超えない範囲内で政令が定める日(2028年12月23日まで)です。

対象となる人・企業

判断能力が不十分な方とその家族、成年後見人・保佐人・補助人、任意後見の当事者、福祉・介護・金融の実務者

改正前 → 改正後(何が変わる?)

改正前(これまで)

事理弁識能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」のどれを使うかが画一的に決まる

改正後(これから)

補助の制度に一元化し、必要な行為について個別に代理権・同意権を付与する

改正前(これまで)

事理弁識能力を欠く常況にあると認定されると、包括的な代理権・取消権を持つ後見しか使えない

改正後(これから)

法定の重要な財産行為の取消権だけを選ぶ「特定補助の仕組み」も選択できる

改正前(これまで)

事理弁識能力が回復しない限り、制度の利用をやめられない

改正後(これから)

利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、申立てまたは職権で終了できる

改正前(これまで)

解任事由は横領などの後見人側の不正・不行跡に限られる

改正後(これから)

「本人の利益のために特に必要があるとき」も解任事由になる

※ 施行日は政令で定められます。現在すでに後見・保佐・補助を利用している方への経過措置も置かれています(原則として現行の内容で継続可能)。個別の手続きは家庭裁判所や専門家にご確認ください。

くわしい解説と実務への影響

段階的なスケジュール

  • 2026年6月17日・24日 参議院本会議で可決・成立(17日)、公布(24日/令和8年法律第45号)
  • 2028年12月23日まで 成年後見制度の見直しが施行(公布から2年6月以内の政令で定める日)

なぜ変わるのか

法務省は改正の背景として、高齢化の進展や単独世帯の増加といった家族の在り方の変化による成年後見制度へのニーズの増加・多様化、障害の有無にかかわらず自己決定権を尊重するという理念の高まり、所有者不明土地問題などの社会課題の解決の観点を挙げています。現行制度は事理弁識能力の程度によって使える制度が画一的に決まるため、たとえば「遺産分割をしたい」という具体的な動機で利用を始めても、能力を欠く常況にあると認定されれば包括的な代理権・取消権を持つ後見しか選べず、自己決定が必要以上に制限されるという問題がありました。

後見・保佐が廃止され、補助に一元化される

改正の中心は、後見と保佐の制度を廃止して補助の制度に一元化することです(民法7条・9条・11条)。①事理弁識能力が不十分であること、②本人の同意、③制度利用の必要性を要件として、特定の行為について個別に、補助人に代理権を付与する審判(例えば遺産分割の代理権)や、補助人の同意を要するとの審判(同意を得ずに行った行為は取消可能)がされます。必要な範囲だけを切り出すことで、自己決定に対する必要以上の制限を防ぐ設計です。

能力を欠く常況にある人には「特定補助の仕組み」

補助を開始した人が、事理弁識能力を欠く常況にあると認定されるときは、法定の重要な財産行為についていずれも取消可能とする仕組み(特定補助の仕組み)を選択して利用できます(民法10条)。この仕組みを使う場合は、医師二人以上の意見を聴いたうえで、明らかに必要がないときは鑑定が不要とされます(家事事件手続法119条)。

「終われる後見」への転換

実務で長く指摘されてきたのが、いったん後見・保佐が始まると、当初の利用動機だった事務が終わっても事理弁識能力が回復しない限りやめられないという点でした。改正後は、能力が回復していない場合でも、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権で利用を終了できます(民法12条)。補助人には家庭裁判所への年1回の本人の状況報告が義務づけられ、その報告の際に必要がなくなったと認められることが想定されています。

本人の意思をより尊重する仕組み

補助人の選任時に家庭裁判所が考慮すべき要素の冒頭に「本人の意見」が置かれます(民法876条の2)。現行法では考慮要素の最後に本人の意見が規定されていました。また、補助人が職務を行う際は、本人に情報を提供し、本人から話を聴くなどの適切な方法で本人の意向を把握しなければならないことが明確化されます(民法876条の11)。家事審判手続でも、補助開始の審判や代理権付与の審判等において原則として本人の陳述聴取が必要になります(家事事件手続法120条)。

死後事務の権限が補助人にも

現行法では、本人の死亡後の火葬・埋葬の契約や未払金の支払といった死後事務の権限は成年後見人にしか認められていません。補助に一元化することに伴い、補助人が本人の死体の火葬・埋葬の契約を締結すること、死亡当時の権限の範囲内で相続財産の保存に必要な行為をすることが可能になります(民法876条の26)。たとえば施設入所契約・施設利用料の支払の代理権付与を受けた補助人が、本人死亡後に未払の施設利用料を支払うといった場面が想定されています。

任意後見制度も使いやすくなる

任意後見については、家庭裁判所が明らかに任意後見監督人による監督の必要がないと認めるときは、監督人を選任せずに家庭裁判所が直接監督することが可能になります(任意後見契約法7条)。また、法定後見の利用開始で任意後見契約が終了するという現行の規律が改められ、補助の利用を開始しても任意後見契約を存続させられます。任意後見受任者が死亡した場合などに備えて契約の効力を発生させる順序を定める合意も可能になり、本人が公正証書で指定した者も発効の申立てができるようになります(任意後見契約法4条〜6条)。

すでに利用している人はどうなるか

最高裁判所の集計では、令和7年12月末時点の利用者数は後見18万828人、保佐5万8,162人、補助1万8,078人です。施行日前から後見・保佐を利用している場合、基本的には現行法の内容のまま利用を継続できますが、解任事由と意向尊重義務については改正後の民法が適用されます。新制度に移りたい場合は改正後の補助の申立てを行い、現在の審判は取り消されます。やめたい場合は審判の取消しを申し立てられます。申立権者は本人、配偶者、四親等内の親族、成年後見人・保佐人等です。

成年後見制度:改正前後の対照

改正前(現行)

  • –能力の程度で後見・保佐・補助が画一的に決まる
  • –後見だと包括的な代理権・取消権しか選べない
  • –能力が回復しない限り利用をやめられない
  • –解任事由は横領など後見人側の不正に限られる
  • –死後事務の権限は成年後見人だけ
  • –法定後見が始まると任意後見契約が終了する

改正後(公布から2年6月以内)

  • ✓補助に一元化し、必要な行為だけ代理権・同意権を付与
  • ✓能力を欠く常況の人は「特定補助の仕組み」を選択可
  • ✓必要がなくなれば家庭裁判所の判断で終了できる
  • ✓「本人の利益のために特に必要があるとき」も解任事由
  • ✓補助人も火葬・埋葬契約や相続財産の保存が可能
  • ✓補助の利用を始めても任意後見契約を存続できる

経過措置・猶予

施行日前から後見・保佐を利用している場合、基本的には現行法の内容で利用を継続できます(附則第2条・第3条)。ただし解任事由と意向尊重義務は改正後の民法が適用されます。新制度に移行したい場合は改正後の補助の制度に係る申立てを行い、現在の後見・保佐開始の審判は取り消されます。利用を終了したい場合は、後見・保佐開始の審判の取消しを申し立てることができます。補助を利用中の場合は改正後の補助の内容で継続でき、終了の申立ても可能です。施行日前に締結された任意後見契約には改正後の任意後見契約法が適用されます(附則第6条)。

対応チェックリスト

自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。

0 / 5 完了

※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。

よくある質問

今、親が成年後見を使っている。どうなる?
基本的には現行法の内容のまま利用を継続できます(附則第2条・第3条)。新しい補助の制度に移りたい場合は改正後の補助の申立てをすることになり、その際は現在の後見開始の審判が取り消されます。利用そのものをやめたい場合は、後見開始の審判の取消しを申し立てることができます。
「終われる後見」というのは?
これまでは、遺産分割など当初の利用目的が終わっても、事理弁識能力が回復しない限り制度の利用をやめられませんでした。改正後は、事理弁識能力が回復していなくても、制度利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めるときは、申立てまたは職権で終了できるようになります(民法12条)。補助人には家庭裁判所への年1回の状況報告が義務づけられ、その際に必要がなくなったと認められることも想定されています。
後見人が本人と会ってくれない。交代できる?
改正後は解任事由に「本人の利益のために特に必要があるとき」が加わります(民法876条の5)。横領などの不正がなくても、補助人が本人と面談を行わないなどで本人が適切な保護を受けられないときは、解任(交代)が可能になります。
報酬はどう決まる?
家庭裁判所が報酬を決める際、補助人が行った事務の内容等が考慮要素であることが条文上明確化されます(民法876条の19)。あわせて、報酬請求が認容された事案の実績が公表される予定とされており、予測可能性を高めることが狙いです。
本人が亡くなった後の火葬の手配は?
改正により、補助人が本人の死体の火葬・埋葬の契約を締結することや、死亡当時の権限の範囲内で相続財産の保存に必要な行為(例えば施設利用料の未払分の支払)をすることが可能になります(民法876条の26)。現行法では死後事務の権限は成年後見人にしか認められていませんでした。
任意後見契約を結んでいる場合は?
現行法では法定後見の利用を開始すると任意後見契約が終了しますが、改正後は補助の制度の利用を開始しても任意後見契約を存続させられます。また、家庭裁判所が明らかに必要がないと認めるときは任意後見監督人を選任せず家庭裁判所が直接監督することも可能になります。任意後見人が死亡した場合などに備えて発効の順序を定める合意もできるようになります。
成年後見制度の見直し(後見・保佐の廃止と補助への一元化)はいつから施行されますか?
公布から2年6月以内(2028年12月23日まで)に政令で定める日です。
対象になるのはどんな人・企業ですか?
判断能力が不十分な方とその家族、成年後見人・保佐人・補助人、任意後見の当事者、福祉・介護・金融の実務者が対象です。自社が該当するかは個別にご確認ください。
何が変わりますか?
これまで「事理弁識能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」のどれを使うかが画一的に決まる」だったものが、「補助の制度に一元化し、必要な行為について個別に代理権・同意権を付与する」に変わります。 これまで「事理弁識能力を欠く常況にあると認定されると、包括的な代理権・取消権を持つ後見しか使えない」だったものが、「法定の重要な財産行為の取消権だけを選ぶ「特定補助の仕組み」も選択できる」に変わります。 これまで「事理弁識能力が回復しない限り、制度の利用をやめられない」だったものが、「利用の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、申立てまたは職権で終了できる」に変わります。 これまで「解任事由は横領などの後見人側の不正・不行跡に限られる」だったものが、「「本人の利益のために特に必要があるとき」も解任事由になる」に変わります。
注意しておくことはありますか?
施行日は政令で定められます。現在すでに後見・保佐・補助を利用している方への経過措置も置かれています(原則として現行の内容で継続可能)。個別の手続きは家庭裁判所や専門家にご確認ください。
法令の原文はどこで確認できますか?
民法の条文は、e-Gov法令検索(デジタル庁)で確認できます。本ページ下部のリンクからアクセスできます。

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一次情報・出典

この記事は法改正の概要をわかりやすくお伝えするものであり、法律上のアドバイスではありません。 施行日・金額・要件などは変更される場合があります。実際の対応にあたっては上記の一次情報をご確認のうえ、 個別の事案は社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

この改正情報の最終確認日:2026年8月29日