労働法 労働関係調整法 施行済 罰則あり

労働関係調整法(労働争議の斡旋・調停・仲裁)

区分:現行制度の解説(直近の改正の施行は2016年4月1日)

30秒でわかる:この規制のポイント

区分 現行制度の解説(直近の改正の施行は2016年4月1日)
誰が対象 労使交渉の当事者(会社の人事・労務担当者、労働組合)、労働争議の解決手続きを調べている方
守ること 争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、労働委員会および厚生労働大臣または都道府県知事へ通知する(第37条) / 緊急調整の決定が公表された日から50日間は争議行為をしない(第38条)
罰則 公益事業の争議行為の通知義務(第37条)に違反した場合は10万円以下の罰金(第39条)、緊急調整の期間中に争議行為をした場合は20万円以下の罰金(第40条)です。
今やること 自社の事業が第8条の「公益事業」に当たるか確認する(ほか3件は下のチェックリスト参照)

かんたん要約

  • ●労働関係調整法は、労働争議を予防し、または解決するための手続きを定めた法律です(昭和21年法律第25号)。
  • ●労働条件の最低基準を定める「労働基準法」とは別の法律です。労働組合法・労働基準法とあわせて「労働三法」と呼ばれます。
  • ●中心となるのは、労働委員会による斡旋・調停・仲裁の3つの手続きと、内閣総理大臣が決定する緊急調整です。
  • ●運輸・郵便・電気通信・水道・電気・ガス・医療・公衆衛生などの公益事業で争議行為をするには、10日前までの通知が必要です。

対象となる人・企業

労使交渉の当事者(会社の人事・労務担当者、労働組合)、労働争議の解決手続きを調べている方

規制のポイント(やってはいけないこと → 守るべきこと)

やってはいけないこと

公益事業で、10日前までの通知をせずに争議行為を行う

守るべきこと

争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、労働委員会および厚生労働大臣または都道府県知事へ通知する(第37条)

やってはいけないこと

緊急調整の公表後も争議行為を続ける

守るべきこと

緊急調整の決定が公表された日から50日間は争議行為をしない(第38条)

※ この法律は労働条件そのものを定めるものではありません。残業や賃金など労働条件の最低基準は労働基準法、労働組合の結成や団体交渉・不当労働行為は労働組合法が定めています。

くわしい解説と実務への影響

この法律は労働基準法とは別の法律です

「労働関係調整法」を調べていて労働基準法の解説にたどり着くことがありますが、両者は別の法律です。労働基準法は労働時間・賃金・休暇といった労働条件の最低基準を定め、個々の労働者と会社の関係を規律します。これに対して労働関係調整法は、労使の主張が対立して争議になったとき、またはなりそうなときに、それを予防・解決するための手続きを定めています。第1条は、労働組合法と相まって労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、または解決して、産業の平和を維持し、もって経済の興隆に寄与することを目的とすると定めています。労働基準法・労働組合法とあわせて「労働三法」と呼ばれます。

「労働争議」の定義(第6条)

第6条は、労働関係の当事者間において労働関係に関する主張が一致せず、そのために争議行為が発生している状態、または発生するおそれがある状態を「労働争議」と定義しています。ストライキやロックアウトが現に行われている必要はなく、そのおそれがある段階で労働争議に当たる点が実務上のポイントです。

斡旋・調停・仲裁の3つの手続き

労働委員会が行う手続きは3種類あります。斡旋は最も簡易で、労働委員会の会長が、あらかじめ作成された斡旋員名簿の中から斡旋員を指名し(第12条)、当事者の間に入って話し合いを取り持ちます。労働委員会の同意があれば、名簿に載っていない人を臨時の斡旋員に委嘱することもできます。調停は、調停委員会が調停案を作って受諾を勧告するものです。第18条は調停を行う場合を5つ挙げており、①双方からの申請、②労働協約の定めに基づく双方または一方からの申請、③公益事業について一方からの申請、④公益事業について労働委員会が職権で必要と決議したとき、⑤公益事業または規模が大きいなどで公益に著しい障害を及ぼす事件について厚生労働大臣・都道府県知事から請求があったとき、です。仲裁は、第30条により、原則として双方からの申請があった場合、または労働協約に仲裁の申請をしなければならない旨の定めがあってそれに基づく申請があった場合に行われます。

公益事業とは(第8条)

第8条は、公衆の日常生活に欠くことのできない事業として、①運輸事業、②郵便・信書便・電気通信の事業、③水道・電気・ガスの供給の事業、④医療・公衆衛生の事業を列挙しています。さらに内閣総理大臣は、これ以外にも、業務の停廃が国民経済を著しく阻害し、または公衆の日常生活を著しく危うくする事業を、国会の承認を経て1年以内の期間を限り公益事業として指定できます。指定したときは、官報への告示に加えて新聞・ラジオ等の適宜の方法で公表することとされています。

公益事業の争議行為には10日前の通知が必要(第37条)

公益事業に関する事件について当事者が争議行為をするには、その争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、労働委員会および厚生労働大臣または都道府県知事に通知しなければなりません。利用者への影響が大きいため、事前に調整の機会を確保する趣旨です。この通知を怠って争議行為を行った場合、責任のある使用者やその団体、労働者の団体などが10万円以下の罰金の対象になります(第39条)。法人の場合は理事・取締役・執行役その他業務を執行する役員に、法人でない団体の場合は代表者その他業務を執行する役員に適用されます。

緊急調整(第35条の2・第38条)

争議行為の影響が特に大きい場合の手続きが緊急調整です。内閣総理大臣は、事件が公益事業に関するものであるため、またはその規模が大きいためもしくは特別の性質の事業に関するものであるために、争議行為により業務が停止されると国民経済の運行を著しく阻害し、または国民の日常生活を著しく危うくするおそれがあると認める事件について、そのおそれが現実に存在するときに限り、緊急調整の決定をすることができます。決定にあたっては、あらかじめ中央労働委員会の意見を聴かなければなりません。決定したときは、直ちに理由を付して公表し、中央労働委員会と関係当事者に通知します。公表があった日から50日間、当事者は争議行為をすることができず(第38条)、違反すると20万円以下の罰金の対象になります(第40条)。

いつの改正が最後か

この法律の直近の改正は、行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第69号)によるもので、2016年4月1日に施行されています。それ以降、条文の実質的な改正は行われていません。労働分野で近年動きが大きいのは労働基準法や労働施策総合推進法などで、労働関係調整法の手続き自体は長く変わっていません。

労働三法の役割分担

労働基準法・労働組合法

  • –労働基準法=労働時間・賃金・休暇など労働条件の最低基準
  • –労働組合法=労働組合の結成、団体交渉、不当労働行為の禁止

労働関係調整法(このページ)

  • ✓労働争議を予防し、または解決するための手続き
  • ✓労働委員会による斡旋・調停・仲裁
  • ✓内閣総理大臣による緊急調整
  • ✓公益事業の争議行為の予告義務と罰則

労使の対立が起きたとき、どの手続きを使うか

当事者の合意はどこまで取れていますか?

まず第三者に間へ入ってもらいたい(双方または一方の申請でよい)

斡旋。労働委員会の会長が斡旋員名簿から斡旋員を指名する(第12条)

調停案を出してもらいたい

調停。双方の申請のほか、公益事業では一方の申請・労働委員会の職権・厚労大臣や知事の請求でも行われる(第18条)

判断に従うことを双方が受け入れている

仲裁。原則として双方の申請、または労働協約に仲裁申請の定めがある場合(第30条)

申請先は都道府県労働委員会(事件によっては中央労働委員会)です。

違反した場合のリスク

公益事業の争議行為の通知義務(第37条)に違反した場合は10万円以下の罰金(第39条)、緊急調整の期間中に争議行為をした場合は20万円以下の罰金(第40条)です。いずれも責任のある使用者・その団体・労働者の団体などが対象で、一個の争議行為について科される罰金の総額に上限があります。

対応チェックリスト

自社で行う対応の一例です。チェックを入れると進捗がこの端末に保存されます(サーバーには送信されません)。

0 / 4 完了

※ 一般的な対応例です。個別の要否は専門家にご確認ください。

よくある質問

労働基準法とは違うの?
別の法律です。労働基準法は労働時間・賃金・休暇など労働条件の最低基準を定めるもので、個々の労働者と会社の関係を規律します。労働関係調整法は、労使の間で主張が対立して争議になったとき(またはなりそうなとき)に、それを予防・解決するための手続きを定めた法律です。労働組合法とあわせて「労働三法」と呼ばれます。
「労働争議」とは何を指しますか?
第6条は、労働関係の当事者間で労働関係に関する主張が一致せず、そのために争議行為が発生している状態、または発生するおそれがある状態を労働争議と定義しています。ストライキが実際に始まっていなくても、その恐れがある段階で労働争議に当たります。
斡旋・調停・仲裁はどう違いますか?
斡旋は、労働委員会の会長が指名した斡旋員が当事者の間に入って話し合いを取り持つ、最も簡易な手続きです(第12条)。調停は、調停委員会が調停案を作成して当事者に受諾を勧告するもので、双方の申請があった場合のほか、公益事業では一方の申請や労働委員会の職権、厚生労働大臣・都道府県知事の請求でも行われます(第18条)。仲裁は、原則として双方の申請、または労働協約に仲裁申請の定めがある場合に行われます(第30条)。
うちは公益事業に当たりますか?
第8条は、公衆の日常生活に欠くことのできない事業として、①運輸事業②郵便・信書便・電気通信の事業③水道・電気・ガスの供給の事業④医療・公衆衛生の事業を挙げています。このほか内閣総理大臣が、国会の承認を経て、業務の停廃が国民経済を著しく阻害するか公衆の日常生活を著しく危うくする事業を、1年以内の期間を限って公益事業に指定することができます(指定したときは官報に告示されます)。
緊急調整とは?
内閣総理大臣が決定する特別な手続きです。公益事業に関するもの、規模が大きいもの、特別の性質の事業に関するもので、争議行為により業務が停止されると国民経済の運行を著しく阻害し、または国民の日常生活を著しく危うくするおそれが現実に存在するときに限り決定できます(第35条の2)。決定にあたっては、あらかじめ中央労働委員会の意見を聴く必要があります。公表があった日から50日間は、当事者は争議行為をすることができません(第38条)。
通知を忘れるとどうなりますか?
公益事業で10日前までの通知をせずに争議行為を行うと、責任のある使用者やその団体、労働者の団体などが10万円以下の罰金の対象になります(第39条)。緊急調整の50日間に争議行為をした場合は20万円以下の罰金です(第40条)。
対象になるのはどんな人・企業ですか?
労使交渉の当事者(会社の人事・労務担当者、労働組合)、労働争議の解決手続きを調べている方が対象です。自社が該当するかは個別にご確認ください。
どんな規制ですか?
「公益事業で、10日前までの通知をせずに争議行為を行う」はインサイダー取引などの規制の対象です。「争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、労働委員会および厚生労働大臣または都道府県知事へ通知する(第37条)」を守る必要があります。 「緊急調整の公表後も争議行為を続ける」はインサイダー取引などの規制の対象です。「緊急調整の決定が公表された日から50日間は争議行為をしない(第38条)」を守る必要があります。
注意しておくことはありますか?
この法律は労働条件そのものを定めるものではありません。残業や賃金など労働条件の最低基準は労働基準法、労働組合の結成や団体交渉・不当労働行為は労働組合法が定めています。
法令の原文はどこで確認できますか?
労働関係調整法の条文は、e-Gov法令検索(デジタル庁)で確認できます。本ページ下部のリンクからアクセスできます。

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一次情報・出典

この記事は制度の概要をわかりやすくお伝えするものであり、法律上のアドバイスではありません。 要件・運用などは変更される場合があります。実際の対応にあたっては上記の一次情報をご確認のうえ、 個別の事案は社会保険労務士・税理士などの専門家にご相談ください。

この情報の最終確認日:2026年9月6日